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- 中島かおり道 第三章 《会社が潰れる…!? 絶体絶命のピンチ!》
「美白の女神(ミューズ)」「美白大臣」「TV通販の女王」と呼ばれる中島香里。
しかし、香里が香里になるまでに波乱万丈のドラマがあった――!
怒濤の半生を全24回でお届けします!
夫と子供と三人、東京のマンションで暮らし始めた香里。
おいしい料理を作るのも、それを家族で囲む食事のひとときも、インテリアやガーデニング、料理に精を出す時間も好き。
そんなごく普通の幸せな主婦であった。
しかしそんな幸せは、夫のひと言でガラリと崩れてしまう。
ある日の夕食の席で夫はこう告げたのだ。
「実はうちの会社、相当危ないんだ」
会社が潰れる…かもしれない!?
夫の中島が社長を務めていた会社は、当時設立してから5年目を迎えていた。
品質がよくリピーターの多い基礎化粧品を作り、訪問販売中心にお客様を増やし、業績も順調…のはずだった。
しかし順調な経営の裏で、化粧品製造を委託していた会社が自社製品を作り、組織販売を画策していた。
その会社はまず東京の一等地に事務所を借り、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡に営業所を構え、説明会という名目の豪華なイベントを開いた。テレビやブランド物のバッグや旅行券などが当たる抽選会がついたイベントで、夫の会社の社員や販売代理店の販売員たちに近づき、引き抜きを開始したのだ。
社員たちは次々に中島の会社を去っていき、さらに社員だけではなく販売代理店からも解約届けが続々と舞い込んだ。
売る商品が・・・ない!?
大切な社員・販売員たちを引き抜かれ、オフィスには会社設立時からいた経理課長だけが残ったが…その経理課長も去ろうとしていた。
こんな状態では1ヵ月もたたないうちに倒産する。そう判断したからだ。
そしてその会社は、身動きできなくなった中島に「商品の製造はもうできない」と通達をしてきた。
…売る商品も絶たれてしまった。
夫が親しくしていた販売代理店の販売スタッフに声をかけると、返ってきたのはこんな冷たい声だった。
「商品がないじゃないですか。ないものは売れません」
その通りだった。
売る商品がない化粧品会社に未来はない。
中島がどれだけ「必ず新製品を開発する」と言っても、まったくとりあってはもらえなかった。
実際、化粧品を製造するためには「化粧品製造許可」が必要で、申請から許可までは通常半年はかかるといわれていたのだ。
これから始めても、すぐには商品を供給できない状態だった。
中島はすっかり意気消沈していたという。
生粋の営業マンである彼には、売る商品がないという事実を前に、どうしていいかわからなかったのだ。
まさに人生最大のピンチだった…。
何も知らないお嬢様主婦の一大決心
仕事を家に持ち込まない主義の中島だったが、この出来事をきっかけに香里に会社の現状を打ち明けてくれるようになったという。
「夫は間違っていない」香里はそう思った。
夫は会社で誠実に商品を作り、お客様にも喜ばれていた。
今までどおりまっとうなやり方で、必ず会社は盛り返せる。
「会社のために、私も働きます」
大学卒業後、一度も働く経験のないまま結婚した香里。
しかし会社の危機を知ってしまった以上「私は働けません」とはとても言えなかった。
夫を助けるため働く決意をした香里……だがそんな香里にタイムリミットが迫る……!?