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- 中島かおり道 第四章 《初めての仕事 初めての説明会デビュー》
「美白の女神(ミューズ)」「美白大臣」「TV通販の女王」と呼ばれる中島香里。
しかし、香里が香里になるまでに波乱万丈のドラマがあった――!
怒濤の半生を全24回でお届けします!
幸せな結婚生活に突然訪れた会社の危機。
去っていく社員や販売代理店の販売員たち……。
そして追い打ちをかけるように「商品の製造はもうできない」という通達…
まさしく人生最大のピンチ!!
一度も働きに出た経験のない香里。
しかし「会社が潰れるかもしれない」という危機を前に「私は働けません」とは言えなかった…。
香里は夫を支え、ともに働くことを決意する。
「会社のために、私も働きます」
初めての仕事は頭を下げること……
売る商品がない化粧品会社に未来はない。
「商品の製造はもうできない」と通達され、悔しさはもちろんあったが……
今はこの方法しかないと思い、夫と二人で製造会社に頭を下げた。
香里が会社のためにした初めての仕事だった。
プライドも何も捨てて、ただただ二人で頭を下げ続け、ようやく3ヵ月分の商品を作ってもらう約束をとりつけることができた。
猶予は3ヵ月…
この3ヵ月の間に商品を販売しつつ、同時に新しく販売する商品を作っていかなければならない……。
方法は一つ。申請している新商品を販売のラインに早く乗せること。
会社の危機を救うためには、それしかなかった。
全国に新しく販売代理店を作り、新しい販売網を構築していかなければならない。
中島は
「販売代理店を作るために、全国を一緒に回ってほしい」
と香里に話を持ちかけた。
大学を卒業してから働いたこともなく、数日前まで専業主婦だった女性が、化粧品会社の販売代理店を作るために全国行脚の旅に出る……!?
それでも香里はひるまなかった。
そればかりか、こんなふうに返事をしたという。
「販売代理店を取られてしまったなら、その倍のスピードで新しい代理店を作ればいいのよ。やりましょう!」
当てがあったわけでもない「ただ、落胆する主人を鼓舞するために啖呵を切ってしまった」と当時を振り返っている。
この思いきりのよさこそが、中島香里らしい一面でもある。
まだ幼かった息子を母に預け、販売代理店を作る全国行脚の夫婦二人旅が始まった。
代理店として販売してくれる人たちを集めるために、北は北海道から南は沖縄の離島まで、商品説明会をして回る旅だった。
「戦闘準備」は第一印象から
今でこそテレビやCM、女性雑誌などで、華やかなファッションに身を包んでいるが、この頃の香里はそれとは真逆。
ダークカラーのパンツスーツに髪はショートのオールバックという、マニッシュな出で立ちだった。
それは主婦の生活から意識的に離れ、厳しいビジネスの世界に入っていくのだという決意の表れだったかもしれない。
そんなマニッシュなファッションが彼女の選んだ「戦闘服」だったが、ひとつだけこだわりがあった。
それがスカーレットレッドの口紅をつけることだった。
くっきりと鮮やで強い印象を残すのがねらいだったというが、そのスカーレットレッドが素肌を白く際立たせてくれたのだ。
つまりこの頃から、すでに自社商品のモデルになっていたのだ。
香里の説明会デビュー ―初めての説明会は鹿児島!?―
1つでも多くの販売代理店を作るため、説明会とデモンストレーションで全国各地へ…初めての説明会は鹿児島のホテルで、東京から社長夫婦がやってくるという物珍しさもあって説明会には多くの人が集まった。
代理店になってくれている人や代理店候補の方はもちろん、自ら代理店契約を破棄した人たちまで押し寄せていたという。
説明会は中島のあいさつのあと、香里が商品の説明をするという段取りであった。
大勢の前で話をするのは、このときがはじめてだったというから驚きである。
とにかく「誠心誠意、語りかけるしかなかった」と自身の著書の中で振り返っている。
各地での説明会は販売代理店業をする主婦たちが多く、ダークスーツにオールバック、スカーレットレッドの口紅という香里の戦闘ファッションがタカラヅカの男役スターのような鮮烈な印象を残し魅了したのだろう。
行く先々で、香里のファンが増えていき、知らず知らずのうちに化粧品を売るカリスマ美容家へと歩んで行く。
5年間の全国行脚で発生した「深刻なトラブル」
鹿児島での説明会が終わり、全国への旅が始まった。
回るのは説明会を行うホテルがあるような都市だけではない。
ときには小さな町の公民館やお寺を借りての説明会や、小さな船を乗り継ぎ沖縄の離島を訪ねたこともあった。
効率のいいやり方ではなかったかもしれない。
だが……がむしゃらに全国を走り回ったこの3ヵ月間でなんとか会社倒産の危機を乗り切ることができた。
この夫婦一丸となって全国を回った日々が、いまの中島香里とクリスタルジェミーの基盤になっているのは確かだ。
「どさ周り」ともいえる全国行脚の日々は、以降5年間にもわたるのであった……
そして、この過酷な日々が香里自身に深刻なトラブルを引き起こしていた。
ある日、百貨店を訪れた香里は、鏡越しに自分にそっくりな女性を見つけた。
その女性の肌は黒くくすみ、うるおいもなくなっている……。
よく見ると…それは自分自身だった。
真っ黒な肌をしていたので、自分だとは気づかなかったのだ。
「自分の肌とはとても思えない…」
全国行脚のストレスと過労、そして紫外線もたくさん浴びていたのだろう…
肌がボロボロになっていたのだ。
肌がこんなに荒れていたら……
誰がそんな人から化粧品を買うだろう……
「……私だったら、買わないわ」
女性を美しくすることが目的だったはずなのに、どうして……。
ボロボロの肌で自信を失った香里は、この危機にどう向き合っていくのだろうか――!?