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- 中島かおり道 第五章 《「私」が「私」に出会った日──黒い私、白い私》
「美白の女神(ミューズ)」「美白大臣」「TV通販の女王」と呼ばれる中島香里。
しかし、香里が香里になるまでに波乱万丈のドラマがあった――!
怒濤の半生を全24回でお届けします!
第五章
「私」が「私」に出会った日──
黒い私、白い私
「販売代理店を取られてしまったなら、その倍のスピードで新しい代理店を作ればいいのよ。やりましょう!」
香里は夫と二人、代理店として販売してくれる人を集めるために商品説明会をして回る全国行脚の旅をスタートさせた。
香里の戦闘服はダークカラーのパンツスーツに髪はショートのオールバックという、マニッシュな出で立ち。
全国各地で説明会に臨む香里は行く先々でファンを増やし、知らず知らずのうちにカリスマ美容家への道を歩んでいた。
しかし5年間にわたる全国行脚の旅は、香里の肌をボロボロに……!?
こんな肌じゃ、化粧品は売れないわ……「黒い私」
ある日、百貨店を訪れた香里は、鏡越しに自分にそっくりな女性を見つけた。
その女性の肌は黒くくすみ、うるおいもなくなっている……
よく見ると…それは自分自身だった。
もともと香里の肌は皮膚が薄く、超がつくほどの乾燥肌。
そのため20歳の頃には「ちりめんじわ」が目立ちはじめ、笑うたびに気になっていたという。
全国行脚のストレスと過労、そして紫外線もたくさん浴びていたのだろう……。
香里の肌は黒くくすみ、うるおいを失い、ボロボロになっていたのだ……。
他の鏡で見直してみても、鏡に映っているのは間違いなく「黒い自分自身」だった。
黒くくすんだ肌を見るたびに、いたたまれず、何度も何度も顔を洗う……だが、
洗っても白くなるはずもないことはわかっていた……。
どうにもならない状況に、香里は絶望を感じていた……。
ありのままの素顔をさらすこと……「白い私」へ
……ボロボロの肌を隠したい。
一人の女性として、化粧品会社の人間として、荒れてしまった肌を人前にさらすのは勇気が必要だった…。
女性を美しくするための化粧品をお勧めしているのに、自分の肌が荒れている……
そんな人から化粧品を買いたいと思ってくれるとは思えない……。
それでも香里は「隠したい…」という気持ちを抑え、自社の基礎化粧品と日焼け止めだけを使い続けた…。
たとえ肌が荒れているからといって隠すことをせず、
ウソ偽りのない「すっぴん」であり続けることを選んだのだ。
あきらめないこと、つづけること…
"これ"と決めたことを貫き通す香里の信念はこの頃からすでに育まれていた。
すると、どうだろう
次第にボロボロだった香里の肌が変化しはじめる。
くすみは徐々に薄く……カサついていた肌は少しずつなめらかに……
香里の肌はうるおいを取り戻ししっとりとした手触りへ変わっていった。
今の肌に合ったお手入れをしっかり続けること。
そして、生活紫外線からお肌をまもること。
──それが美しい肌への近道なんだわ。
世間は「小麦色に日焼けをする」日焼けブーム。
当時、"紫外線対策の必要性"をいち早く取り入れ「日焼け止め化粧品の先駆者」と言われたのは、
この身をもって体験した苦い思い出からであろう。
そして香里は「白い私」へ。
この体験は香里が「素肌美」に目覚めるきっかけとなる。
いまでは「美白大臣」「美白の女神(ミューズ)」とまで称えられる自信に満ちた白く美しい香里の素肌は、この「黒い香里」の経験が礎となっているのだ。
苦い経験を『力』に変える──ピンチはチャンスに
「黒い私」から「白い私」へ──そんな香里自身の経験を語るうちに、耳を傾けてくれる人が確実に増えていった。
「がんばって!」
という声援をもらったり、共感を持って受け入れてもらえるようになった。
「本当にファンデーション塗ってないの?」
という人には、直接香里の肌を触ってもらう。
すると言葉を重ねるよりも効果的に商品のよさを伝えることができた。
信じられないと言う人には、その場でメイクを落とし実際に商品を試してもらった。
香里が自分自身の経験を正直に明かし実際に素肌を触ってもらうことが、
代理店の人やお客さまの心を動かす一番の広告になっていた。
……苦しみを乗り越えて辿り着いた香里だけの、香里らしいやり方だった。
そして全国行脚の旅も終わりに近づいていた頃に、夫がしみじみとこう言ったという。
「中島香里ファンクラブだね。代理店というよりは」
「これいいから、使ってみない?」という香里の気さくさは、いつの間にか全国の代理店を「中島香里ファンクラブ」という応援団に変えていたのだ。
一度はズタズタになった販売網……しかし全国行脚の終盤には、以前よりも強い信頼関係で結ばれた代理店販売網を手に入れることができた。
いざ! 地元・名古屋へ
最後の訪問地は名古屋…
……名古屋のお客さまは手ごわい。
生まれ故郷でもある名古屋は、香里たちを受け入れてくれるのだろうか――!?